高齢者の腰痛は悪化防止をー姿勢を整えるストレッチから生活の注意まで

腰に痛みが出ているイラスト 経験からリハビリのコツをアドバイス

#高齢者 #腰痛 #体操(リハビリ)

高齢になると多かれ少なかれ腰痛を持っている人が増えます。脊柱の加齢による変形による変形性脊椎症、腰部脊柱管狭窄症や骨粗しょう症によるいつの間にか骨折(圧迫骨折)で背骨がつぶれて変形している人が多くいました。(整形外科の通所リハだったのでなおのこととは思いますが)

ただ変形の仕方と腰痛の訴え方(感じ方)は人により差異がありました。また年齢的に変形してしまったものに関しての根本治療は困難なのでいかにその身体と付き合っていくか知って、うまく付き合っていく必要があります。

高齢者の腰痛の原因と悪化防止のために腰痛体操(リハビリ)をする意味

若年者の腰痛は「ぎっくり腰」などの急性疼痛が多いのに対し、高齢者の腰痛は慢性疼痛が多い特徴があります。

高齢者の腰痛の主な原因は、変形性脊椎症、腰部脊柱管狭窄症、脊椎圧迫骨折のいずれかを伴うものがい多いですが、まれに大動脈解離、悪性腫瘍の骨転移、尿路結石、化膿性脊椎炎等頻度は低いものの、以下のような疾患による危険な腰痛もあります。これらの場合は、早急に積極的治療が必要となるため、見逃さないよう注意が必要です。

まずはその原因をドクターにちゃんと診断してもらう必要があります。その中で手術などの対象にならない人たちには保存療法として体操が処方されます。

腰痛の種類を説明している図
腰痛で分かっていることの説明図
公益社団法人理学療法士協会 理学療法ハンドブック シリーズ3腰痛https://www.japanpt.or.jp/about_pt/asset/pdf/handbook03_whole_compressed.pdfより引用

また手術が決まった人も術後の経過をよくするためには術前から無理のない範囲で柔軟性や筋力をつけておくことで回復後の経過をスムーズにする効果があります。

 

腰の骨に異常が見られる人でも、痛みの感じ方にはそれぞれ差があるので不思議です。腰痛体操の基本は腰に負担のかかる定着した悪い姿勢を改善するためのストレッチをすることと、腰に負担のかからない良い姿勢を保つためのインナーマッスルを鍛えることが重要になってきます。姿勢を保つということは、持久力がいりますので体操は最低3か月くらい続けるというのが原則です。

デイケアに来られていた利用者さんも腰痛の方が多くいました。整形外科の付属のデイケアでしたので、ドクターに診察してもらい、物理療法(牽引や温熱療法)して痛みを軽減してから体操をすると悪化する方はほとんどいませんでした。

腰回りの筋肉が固くなっている人がほとんどだったので、運動の前はホットパックや入浴後等身体が温まっていると筋肉が伸びやすくなり血行が改善し痛みが出にくくなります。また筋肉を温めることで準備体操のように筋肉がつきやすくなる効果もあります。

高齢者が腰痛を予防改善する為のストレッチ(椅子坐位から立位)の実際

腰痛の人は筋肉がこわばってお腹や胸が大腿部につけられず、靴が履きにくくなっている人が多くいました。温めた後、おなかと大腿部を密着させるつもりで伸ばしていくことで腰回りの後ろ側の筋肉が伸びて、血行が改善し筋肉が伸びやすく痛みも出にくくなります。

仰向けに寝て大腿部を引き寄せるのが基本ですが、かなり固くなっている人は、引き寄せづらいのでそういう時は、タキザワプログラムの「こんにちは」の運動のように座って体幹を前に倒す方が、自重を使えるのでやりやすいと思います。座っている時なら思いついたらいつでもできます。最初はつかなくても毎日少しずつおなかと大腿部がつくのを目標に伸ばしていきましょう。

おじぎをするように体幹を前に倒しておなかを太ももにつけるようにする腰の後ろの筋肉のストレッチの図

その次は、座ったまま大きく身体(体幹)を捻じりましょう。捻じる側の大腿部の外側に手を当てて背中は背伸びをするように伸ばしながら気持ちのいい範囲で伸ばしましょう。次は反対です。(腰の横側の筋肉を伸ばす意識で)

身体を捻じりながら腰の周りの筋肉をストレッチしている図

その次は浅く腰かけて片足の膝を伸ばして足首を前に反らせながら身体を伸ばした足のほうに倒して膝の後ろの筋肉を伸ばします。次に反対も。

椅子に座ったままハムストリングスをストレッチする方法

腰が痛いとついつい前かがみの姿勢が定着して、バランスをとるために膝も曲がったままの姿勢になっています。そして、膝が曲がっていると前を向くために腰を反ってしまうという悪い姿勢の悪循環が起きます。膝の後ろの筋肉が伸びにくくなっていたら悪循環は始まっています。

その次は立ち上がって片足を後ろに引き、アキレス腱を伸ばすそのとき、股関節の前側を伸ばすよう体幹は真っすぐ立てて行いましょう。そうすると、前かがみの原因になっていた腸腰筋という股関節を曲げる筋肉が伸びます。

立位での下腿三頭筋と腸腰筋のストレッチの方法

筋肉をストレッチする時の基本はリラックスです。息を止めずにゆっくり息を吐きながらおこないましょう。または1,2,3,4、・・・というように声に出してゆっくりカウントしながら行うと息を止めずに行えるのでやってみてください。

これらの筋肉が柔らかくなったら後は腰骨を支える腹筋や背筋の他、インナーマッスル強化をします。そのインナーマッスルにより骨盤を正しい位置に保つことが重要になってきます。

腰に負担の少ない姿勢を保つために腰回りの筋肉をつけましょう

腰回りの筋肉で代表的なのはまず腹筋です。ただ腰痛体操としての腹筋運動はやみくもに体幹を起こそうとするのではなく、ゆっくりおへそを覗き込むようにできればお尻の下側を浮かしておへその位置で折れ曲がるように筋肉を収縮させるように行います。

(実際腹筋と呼ばれる腹直筋はおへその下の恥骨の先から肋骨の前側についている筋肉なのでそれで充分鍛えられます。身体を起こしすぎると弱って痛みの出ている腰に負担をかける可能性があります。肩甲骨が浮くところで十分です。

膝を立てた臥位で首を持ち上げて肩甲骨が浮き上がるところまでおへそを覗き込むように起きる腹筋運動のイメージ

背筋も背中を反らすのではなくうつ伏せで、右手と左足、左手と右足を交互にゆっくり浮かすことで背骨に負担をかけずに鍛えられます。うつ伏せで反らせるのが困難な場合は、四つ這いで交互に持ち上げましょう。交互挙上が困難な場合にはまずは片手片足ずつから行ってください。

伏臥位で 右手と左足、左手と右足というように交差挙上して背筋を強化する運動の図

うつ伏せが難しい場合は

よつばいで 首や片手片足、そして交差挙上での背筋を強化する運動のイラスト

四つ這いの姿勢がとり難い場合は立位で片方の手で手すりや台を持って行っても効果があります。腰痛やひざ痛、猫背等で姿勢が前かがみになってくると身体の後ろ側の筋肉を使う機会が減って弱ってきやすく、それがまた前かがみの姿勢を助長する悪循環が起こりやすいので意識して鍛えたいですね。

後は腰を守るインナーマッスルの強化として両膝を立てた姿勢からお臍の下をへこませながら殿筋を収縮させてお尻の先を上げる運動ですがこれは要領が難しいのでできれば理学療法士など運動要領がわかる人に教えてもらえればお願いしてください。

膝立て臥位から腰を持ち上げての背筋強化及び骨盤の傾き調整の運動の図

コルセットで下腹を締めるのを自分での筋肉で行います。これが自分でできるようになると骨盤が安定するので背骨への負担が減りコルセットも卒業できます。コルセットで腰痛が楽になる人は是非マスターしてほしいです。

筋力強化の後には太ももを交互にお腹につけるように伸ばして腰の後ろの筋肉を伸ばしてから、両膝が抱えられたらそのまま左右に転がるとマッサージ効果があります。(これはヨガの教室で学びました)

片足ずつ足を胸につけるように腰背筋を伸ばす運動のイメージ
両足を胸に抱えて左右に転がるようにして背中の緊張をとる運動のイメージ

一番難しいのが骨盤の傾斜を整えることです。骨盤が前傾すると姿勢を起こす為に腰椎の前弯が強くなり、神経の出入り口が狭くなって圧迫したり、椎間が狭くなってヘルニアが起きたりしやすくなります。後ろに倒れていると腰椎が後弯して背骨が曲がってきてしまいます。

壁に背中をつけて立った時腰の後ろに指が入るくらいが正常でそれ以上開いてると前弯が強く、入らない人は後彎です。骨盤が正しい傾斜で、腹筋背筋が緊張して伸びあがっているのが正しい姿勢です。

骨盤の傾きによる姿勢の特徴を前傾、正常、後傾型と方ごとに説明した図

前弯が強い人はお腹を引っ込めてお尻の先を上げるように骨盤を後傾させる運動。後弯が強い人はおへその下を引っ込めながら骨盤を立てる意識で伸びあがる運動が良いです。

高齢者は脊柱管狭窄症や変形性脊椎症が腰を丸めた姿勢の方が症状が軽減しやすい、圧迫骨折の方は骨がつぶれて円背になりやすいためほとんどの方が後傾型でした。ただそのまま歩行器などに頼っていると姿勢が前に倒れて起こせなかったり脊柱の可動性が低下して周辺の筋肉が硬くなり循環が悪くなることで慢性痛を起こしている人もいました。

骨の変形があってもなるだけ正しい姿勢が、立っている間や座っている間に働いていられる持久力がないと、骨に負担がかかってさらに背骨の変形につながります。ストレッチして正しい姿勢が取れるように、そしてその姿勢が持続して取れるよう姿勢筋の持久力が上がることが高齢者の腰痛予防の基本です。

座ってできる腰痛体操は 公益社団法人理理学療法士協会の理学療法ハンドブック【腰痛】に載っていますので紹介しておきます。

座ってできる腰痛体操の図解
公益社団法人理学療法士協会 理学療法ハンドブック シリーズ3腰痛https://www.japanpt.or.jp/about_pt/asset/pdf/handbook03_whole_compressed.pdfより引用

腰痛でも安静にしすぎは禁物です

腰痛の原因がわかっている時は、ドクターの指示に従う必要があります。が、その後に過度な安静や痛みへの不安を抱えてしまうと、腰痛慢性化の原因になります。

安静や不安が慢性腰痛になっていく悪循環を表す図
公益社団法人理学療法士協会 理学療法ハンドブックシリーズ3腰痛より引用https://www.japanpt.or.jp/about_pt/asset/pdf/handbook03_whole_compressed.pdf

昔は腰痛になるとまずは安静にしましょう。というのが一般的で私もそう思っていました。でも世界では、腰痛があってもできるだけ生活や仕事は続け、安静は最小限にすべきであるというのが常識で日本でも今は早期から徐々に活動することが推奨されています。

安静は世界では進められてないという説明の図
図説は公益社団法人理学療法士協会 理学療法ハンドブックシリーズ3腰痛よりhttps://www.japanpt.or.jp/about_pt/asset/pdf/handbook03_whole_compressed.pdf

腰痛があっても動くためには

私もデイケアの利用者さんにはコルセットを処方してもらってつけて動けるのであればなるだけ動くようにいってきました。

コルセットは弱っている腰の周りの筋肉の代わりに腰の姿勢を整え、不意な衝撃から腰を守る効果があるので痛いときや腰を痛める可能性のある作業や普段以上に長時間作業する時、冬で冷えが予想される時は装着しておくと安心です。

もしくは、そういう時にすぐ着けられるように持っていると安心です。市販のものもありますが、意外と高いので診察に行ったときにドクターと相談すると良いでしょう。

予防の上でコルセットは良いアイテムですが、頼りすぎはいけません。コルセットをつけているとその腰回りを安静に保つための姿勢筋自体の働きを弱めてしまうのでコルセットをつけている時こそ腰痛体操は必需です。

冬の間は保温の助にもなりますが、夏は暑いし皮膚トラブルの原因にもなります。トイレの度に装着しなおしは面倒です。腰痛体操を続けて早くに脱却を図りましょう。また腰痛体操する時は折角の運動の効果を弱めてしまうのでなるだけ外しましょう。(痛いときはもちろん装着したままでもやらないよりはやった方がよいです)

コルセットをつけていれば痛みがなく歩けるのなら、散歩もしましょう。万歩計や自分で歩いた距離を見極めながら少しずつ歩く量を増やしましょう。精神的な鬱々も腰痛悪化の原因になります。鬱予防には1日4000歩程度歩くのが良いということなのでまずはそれを目標にしましょう。

外を歩きまわれないうちはタキザワプログラムで立ち上がり歩ける身体の維持に勤めましょう。

腰回りの柔軟性を保つことも重要です。立って前屈したり、後屈したりがスムーズにできなかったら腰痛体操のストレッチを続けましょう。

荷物を持つときは膝を屈めて荷物を身体に密着させましょう。

長く同じ姿勢が続くときは途中に休憩をとって腰回りを動かしましょう。

介護をするときは要介護者にタキザワプログラムを取り入れて、立ち上がりの時に体幹が後ろに反らないようにパタコロの動きでしっかり自分の体重を自分の足に引き受けてもらうよう誘導しながら最小限の介助で動いてもらうようにしましょう。

参考、引用:

公益社団法人理学療法士協会 理学療法ハンドブック シリーズ3腰痛https://www.japanpt.or.jp/about_pt/asset/pdf/handbook03_whole_compressed.pdf

健康長寿ネット/腰痛 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/youtsu

腰痛で十分に動けない時はタキザワプログラム(メソッド)

立ち上がり歩くためのレディメイドリハビリプログラム-タキザワプログラム(メソッド)
高齢者でも安全に行える立ち上がりのリハビリプログラムの紹介

コメント

タイトルとURLをコピーしました