#高齢者 #歩行
「最近歩くのが遅くなった」
「歩幅が小さくなった」
「以前より疲れやすくなった」
このような変化は、高齢になると多くの方にみられます。
歩行能力の低下は転倒や要介護のリスクを高めますが、早めに気づき適切な運動を行えば改善や維持が期待できます。
この記事では
- 歩行とは何か
- 歩行能力を左右する要素
- 歩行速度の重要性
- 評価方法
- 改善方法
について理学療法士の視点から解説します。
理学療法士の経験上では病気やけがで一時的に歩けなくなっていた人が立って歩行できるようになると表情が明るくなる。精神的にも重要な機能です。
歩行とは
歩行の定義
歩行(ほこう)とは、「歩く」ことであり[1]、足(脚)による移動のうち比較的低速のものを言い、厳密にはどの瞬間も少なくともひとつの足が地面についたまま移動する動作を言う。
参考、引用: ウィキペディア 歩行 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A9%E8%A1%8C
歩行は単なる移動手段ではありません。買い物や通院、趣味や旅行など、自分らしい生活を送るための基本となる動作です。高齢者では歩行能力が生活の質(QOL)や自立度に大きく影響します。
歩行に必要な能力
| 能力 | 役割 |
|---|---|
| 筋力 | 立位保持・推進力 |
| バランス | 片脚支持を安定させる |
| 関節可動域 | 歩幅を保つ |
| 感覚 | 足裏の接地を感じる |
| 認知機能 | 安全に周囲を判断する |
具体的には
- 筋力: 立位を保持するための抗重力筋、バランスをとる為の筋力、推進力を得るための筋力
- バランス:足を交互に動かすその間の立位や姿勢を保つためのバランス能力
- 関節可動域:足を動かす為に股関節、膝関節、足関節の可動域。体幹の回旋、腕の振りのための可動域
- 感覚:足底を踏みしめる触覚だけではなく固有感覚といわれる筋肉、腱、関節に由来する感覚
- 認知機能:認知機能の低下による発動性の低下、失認等により場所が分からなくなる
歩行に必要な筋肉については別の記事で詳しく解説しています。記事はこちらhttps://patareha.com/hokou/

高齢者の歩行でよくみられる変化
高齢者になると起こってきやすい歩行の変化としては
- 歩幅が狭くなる
- 足が上がらない(すり足歩行)
- 歩行速度が遅くなる
- ふらつく
これらのことは若いころに比べて筋力が低下し、姿勢や関節の動きが悪くなることから徐々におこってきます。
この変化をいち早くつかむために歩行速度は健康状態を反映する重要な指標になります。
歩行能力は総合力で決まる
歩行能力は筋力だけで決まるものではありません。関節の柔軟性、バランス能力、姿勢、感覚機能、認知機能などが組み合わさって成り立っています。
そのため、一つの筋肉だけを鍛えても歩行速度が改善しないことがあります。歩行能力を維持するためには、これらを総合的に評価し、バランスよく改善していくことが大切です。
実用的な歩行速度の他にも耐久性も必要になってきます。
住んでいる環境(例:階段、坂道、公共交通機関の有無等)によってもその人により必要な能力が変わってきます。
歩行速度は自立した生活や健康寿命の指標になります
歩行できるといっても家の中が何とか移動できる、訓練としての平行棒内だけ、近所の散歩のみ、公共交通機関を利用して出かけられる等移動能力には差が出てきます。
それには歩行距離の耐久性や歩行速度等がかかわってきます。
歩行速度とは
単純に言うと時間当たりどれだけ歩けるかです。測定しやすいのは5mを何秒で歩けるかです。
フレイルの判断基準でも5mの距離で5秒以下が判断基準の指標になっています
日本の道路横断には1.0m/secの歩行速度が必要である。街にある横断歩道の信号もこの基準で作られているようですので、横断歩道を渡り切るのが困難になってきたら要注意サインです。フレイルの判断基準も、この歩行速度以下になっています。
また横断歩道が渡れなくなると、生活活動の範囲が狭くなります。自立生活に必要な施設が横断歩道を渡らずできる範囲にあることは稀です。
ということは自立した生活を脅かす問題に発展する可能性もあります。
参考、引用:道路横断に必要な歩行速度と下肢筋力の関連https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/28/2/28_KJ00001309618/_article/-char/ja
歩行速度が遅くなる原因
歩行速度が遅くなる原因としては
- 下肢筋力低下
- 柔軟性の低下
- バランス能力低下
- 姿勢の悪化
- 痛み
- 認知機能低下
- 栄養不足
などが考えられます。
これらは、複合的に起こっている場合がほとんどです。
例えば
腰痛膝痛が続くと姿勢が悪化し関節の動きが低下して歩幅が低下する為、結果同じペースで歩いても歩ける距離が低下し歩行速度が低下。
体調不良で食欲不振が続き、サルコペニアやフレイルが進んで筋力低下し歩行速度が低下。
認知症や老人性のうつで運動量が低下し筋力や柔軟性が低下。
筋力や柔軟性が低下することによるバランス能力の低下で効率よく足が運べない。
等々
歩行速度と健康寿命
最近欧米で、歩行速度と寿命の研究が数多く報告されているそうです。歩く速さが健康や長寿に大きく関係しており、さらには寿命を予想できるかもしれないという内容です。
平均すると秒速0・8~1・0メートル(時速2・9~3・6キロメートル)です。65歳以上の男女3万4485人を最長21年間追跡した研究では、1・6メートル/秒で歩行する人の平均寿命は95歳以上、0・8メートル/秒の人は約80歳、0・2メートル/秒の人は約74歳です。歩行速度を基にした理論上の余命も計算できます=図=。

引用;教えてホームドクター 歩行速度と寿命 https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/2483
歩行速度は死亡率や転倒、要介護リスクとも関連することが多く報告されています。歩行速度は健康状態を把握する簡便な指標として活用されています。
歩行速度の測定方法
歩行速度の測定としては
5m歩行テストとは、5mの距離を何秒で歩けるか歩行速度を測定するテストです。
正確に測るには歩行開始前後に1m程度余裕をもって測る、最大努力速度や通常速度などありますが、自分でも概ねの参考速度は測れます。
5m歩行のカットオフ値
- 横断歩道を渡りきれない:5秒以上(1.0m/秒)
(村永 信吾 高齢者の運動機能と理学療法 PTジャーナル2009.10) - 転倒リスクが高くなる: 6.2秒以上(0.806m/秒)
(大田尾 浩 要介護高齢者における一年間の転倒予測因子 第50回日本理学療法学術大会)
他にも同様に10mで行う10m歩行テストと
TUG (Time up &go test)といわれる椅子から立ち上って3m先のポールを回って椅子に座るまでの時間を測る方法もありますがこれは椅子から立つ座る、方向転換を含めた歩行の総合評価となります。
参考、引用:5m歩行テストの評価方法・カットオフ値|高齢者の身体能力評価について解説

歩行速度を改善するには
歩行速度を改善するには、筋力だけでなく柔軟性やバランス能力、立位能力などを総合的に改善することが重要です。
- 足関節の柔軟性改善:足首が硬いと歩幅が狭くなり、つまずきやすくなります。
- 股関節伸展:大きく一歩を踏み出す歩幅の改善には股関節を伸展できる柔軟性と筋力が必要です
- 大腿四頭筋:足を延ばして立ち、膝の衝撃を吸収。これが弱ると膝折れの原因になります。
- 中殿筋:股関節を支えバランスをとる為に重要です
- バランス練習:バランスは一つの筋肉や関節だけでなく多くの筋肉が連動してとるので実際のバランスをとる練習が必要です
- 姿勢や柔軟性改善:姿勢が悪く柔軟性が足りないと歩幅は狭くなり、膝痛や腰痛などの原因にもなります
- 立位時間を増やす:そもそも立っていられないと歩けません。歩く量に応じた耐久性が必要です
等があげられます
歩行能力(速度)を改善する為のリハビリ
歩行速度の低下が複合的な原因で起こっている為、運動もなるだけ複合したアプローチをする必要があることがほとんどです。
高齢になると歩行能力は少しずつ低下しますが、早い段階で気づき、適切な運動を続けることで維持や改善が期待できます。
歩行速度を定期的に確認し、自分の歩行能力を知ることが、いつまでも自分らしく生活するための基盤になります。
歩行能力の低下に気づいたらできることからリハビリを開始しましょう。
リハビリの内容としては以下を参考にしてください。
足関節の柔軟性筋力維持に関してはこちら https://patareha.com/sokukannsetu/

立位時間を増やすに関しては こちら https://patareha.com/standing/

バランスに関しては こちら https://patareha.com/balance/

柔軟性を保つに関しては こちら https://patareha.com/jyunansei/

立位や歩行に必要な筋肉の強化に関しては https://patareha.com/omori/

高齢の方が安全におこなえる歩行を含めた立ち上がり動作の改善や維持を重視したリハビリの考え方については、こちらの記事も参考にしてください。

よくある質問
歩く速度は何m/秒なら正常?
歩行速度の正常は年齢、性別、その他の条件によっても差があります。
ただ生活していくために屋外では横断歩道が安全に渡れる。1m/秒
屋内でも転倒しないで安全に生活できる。(0.8m/秒)
トイレに間に合う??
等その人の生活に必要な速さにプラスアルファの速さが必要といえます。(これは体調不良等の低下にゆとりを持たせるため)
歩行速度は何歳から遅くなる?
歩行速度に関係する筋力は20〜30代をピークに減少します。そのころからよほど意識して運動や栄養などのケアをしない限りそれに合わせて低下しているとかんがえられます。
歩行速度が遅いと転倒しやすい?
歩行速度が遅くなった時点で、筋力、可動域、バランス能力等転倒予防に必要な能力が低下していると考えると転倒しやすい状態
転倒予防に関しての記事はこちら https://patareha.com/tentou/

歩行速度は速い方がいい?
歩行速度が速いほうが運動能力は高いと予想できます
しかし私の経験からいうと、基本能力(筋力、バランス、柔軟性等)がないのに早く歩こうとしたことで腰痛や膝痛を起こした方もいました。
基本的な運動能力を高めて維持することが歩行速度の維持には重要です。
まとめ
高齢になっても自立した生活や自分で行きたいところに行くためには歩行能力の維持が必要です。
歩けなくなる前の指標としては歩行速度が重要です。
高齢になると歩行能力が低下しきってからの回復は至難の業です。歩行能力は歩けなくなってからではなく、歩行速度が低下した段階で対策を始めることが大切です。
私は理学療法士として多くの高齢者のリハビリに携わってきました。その中で特に印象に残っているのは、一時的に歩けなくなっていた方が再び歩けるようになった瞬間です。
自分の力で立ち、歩けるようになると、多くの方の表情が明るくなり、「また出かけられる」という自信につながっていく姿を何度も見てきました。歩行は単なる移動手段ではなく、自立した生活や生きがいを支える大切な能力だと感じています。
歩行速度は誰でも簡単に測ることができます。まずは現在の歩行速度を知ることが、歩行能力を維持する第一歩になります。
いつまでも歩けるために為に歩行速度も意識してみてはいかがでしょう。
ホームに戻るには https://patareha.com/


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