理学療法士の学生時代に赤ちゃんの発達過程の授業を受けてきました。学生時代はただ漠然と暗記するのに必死でしたが、実際自分が子供を育ててみると実によく頭に入りました。そして少しでもその正常発達過程から逸脱すると検診で保健師さんに指摘され、不安になったり落ち込んだりしたものでした。
幸い住んでいた住宅の敷地内で小さな公園があって同じような子育て中のママがたくさんいたので子供により個性があってなかなかぴったり発達過程通りはまらないことも多いことを悩み相談しあえたので助かりました。
理学療法士として臨床に戻ると子育て経験からしっかり頭にインプットされた発達過程が歩行獲得に実に理にかなっていることを実感しました。
赤ちゃんの発達はもう一度歩こうと思う人のリハビリには大いに参考になります。正常に発達すればたった1年で首も座らない寝たきり(?)状態から自分で立ち上がって歩けるようになる。その過程は高齢になってもしっかり歩けるための筋力や感覚を養うためのヒントが多く含まれています。
首の座らない寝たきり(?)状態から約1年で歩くようになる赤ちゃんの正常発達
赤ちゃんといのは正常に発達するとすごい存在です。首も座らない寝たきり状態から3か月で寝返りができ5~6か月で座れるようになり這ったと思ったら机や台を利用して立ち上がり約1年かけて一人で歩けるようになるのです(これも結構個人差はありましたが・・・)。
子育て中はそれに感動する間も無くトイレにまでついてこられ、机や台の上のものを片付けなくてはならなくなって毎日バタバタで嘆息していましたが、脳に組み込まれた発達プログラム従い忠実に動作や歩行に必要な筋力や感覚を磨いていく過程は見事です。

図はhttps://benesse.jp/contents/akachan/upgrowth/chart_1_la_1.shtmlより引用
寝返り、起き上がりを習得するととにかく何度も繰り返します。寝返りができるようになると平らな床であれば寝転がりながら移動してしまいます。うつ伏せになっても息が止まらないよう首を起こして身体を起こしても首が座るようになります。
起き上がれると何度も寝転がっては起きてきます。この繰り返し運動で体幹の力や体幹の抗重力筋を養います。
そしてうつ伏せで腕や足を使って這うことで腰回りや肩回りの筋肉を鍛えます。上の子は仰向けで腰を持ち上げるブリッジ運動でどこまでもすすんでいってしまっていました。これも腰回りの筋力強化になります。
這い這いができるようになるとどこまでもお母さんをめがけて這っていきます。子育て中はこの後追いで大変な思いをしましたが後で考えるとやがて立って歩くための基礎訓練になっていたのだなあと気づきました。
そして机などの台につかまって立ち上がれるようになるとひたすら立ってはスクワットを繰り返してしっかり立てる足を鍛えます。そして台につかまりながら伝い歩きを始めます。
初めは台や机に沿って横歩きでの移動練習を続けているうちに片手を放して立つようになり少しずつ前に進む練習を始めてある日両手を放して歩き始めます。このころには四つ這いから高這いになってから立ち上がる動作能力も筋力も身に着けているのです。
赤ちゃんの発達から学ぶリハビリのコツとは
発達の過程で何度転んでも骨折もしない柔軟性は大人にはまねできませんが。もう一度歩こうと思う人のリハビリには大いに参考になります。
安全に歩くためには体幹や足腰のもとの筋力も鍛えていざというとき床から立ち上がれる程度の基礎の筋力を維持しておく必要があるのです。その手前で行っていた起き上がり練習やブリッジ、ハイハイ等は体幹や腕の根元(上肢帯)腰や股関節回りを安定させるための筋力強化になっています。
病院でのリハビリは早く歩けるようになってできるだけ早く退院するという大前提の目標があります。なのでとにかく立てて歩けることを中心に訓練されてきた方を多くみてきました。歩けて無事退院できたものの不意のきっかけから床に滑り落ちてしまい立ち上がり方がわからず困った。退院前に1度だけ習ったけれど忘れてしまったという人も多くいました。
立ち上がりの基本は赤ちゃんが初めて立ち上がる時の方法、四つ這いから高這いになりゆっくり体を起こす方法です。高齢の方はこの時膝に手を添えて身体を起こすとより安定します。また固定された台や椅子があればそこに手を添えましょう。先ずはうつ伏せもしくは四つ這いに近い形になるのが基本です。
仰向け(上向き)のまま立ち上がるのはかなり柔軟性もいり高度です。

リハビリのプログラムには赤ちゃんの発達を踏まえたものが多くあります、四つ這いの姿勢ができないのに立って歩くと肩回り腰回りの支える筋力が弱くて痛みが出る原因になることもあり、床に滑り落ちてしまうと立ち上がるすべがなくて困ることになります。そうならない為にはできればその過程ができているか確認して出来なかったら練習しておきましょう。
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